緑のじゅうたん
草取りは草を切るのでなく、根から抜くよう
にと言われて育ち、祖母や親が草を気に
かけて、週末によく草取りをしてました。
私も15年前まではそれに何の違和感も
持っていなかったのですが、
最近の草刈りのやり方は、
土を削る位深くなってきているので、
春の七草や秋の七草は勿論の事、
ほぼすべての在来種が数を減らして
しまっているのが心配です。
元々日本は、畑のやり方も自然と
共存する形で、草とも共存し、
取った草は役立て、残りは自然に
返すというやり方でした。
畑で取った草は畔に置き、
枯れたら肥料にしたり、そのまま
家禽の餌にしたり。つくしやヨモギ、
母子草などは調理して食べ、
有毒の彼岸花はモグラよけにしたり。
今は、肩に掛けるタイプの草刈り機や、
ゴーカートのように乗るタイプの草刈り機で、
草の種類など関係なく、
少しでも草刈りの回数が減らせるように、
すべて地面すれすれまで刈り、
しかも集草までして、地面の地肌まで
むき出しにしてしまっています。
日本人は何の為に草刈りをするように
なったのでしょうか?
西洋のグリーン革命、草は敵という
考え方が日本にも広がったからと
言われています。
草刈りの目的は、
1.背の高い草がはびこっていると、
近所から言われるから。
(背高泡立ち草やオオアレチノギク、
姫昔ヨモギなどの背の高い風媒花が
至る所にどんどん増えています)。
2.草が生えているとゴミをされ易いから
3.畑や田で育てたい作物より草の方が
強いので、作物が負けるから。
位でしょうか?
この中でも一番大きな理由は①番では
ないでしょうか?
それなら、小さい丈の可愛い花の咲く
在来種位はあってもいいのでは
と思うのです。むしろあった方が、
少しでも外来種の抑制にもなります。
地面が土だけになり、地肌がむき出しに
なってしまうと、土の乾燥が進んで、
土が痛みます。見ていると、在来種は
外来種より弱いようです。外来種に
囲まれていると、徐々に廃れていって
いるようです。
そうなると荒地に強い外来種の天下。
今どこの空き地でも見られる
背高泡立ち草や大荒れ地の菊、
姫昔蓬などの背の高い外来種は、
元々種の数がものすごく多く、
風に乗って飛ぶ風媒花です。
刈っても刈ってもすぐ飛んでくる種で
増えます。背高泡立ち草は地下茎でも
広がっていきます。
それに比べて在来種は種だけで増える
ものも多く、風媒花の日本タンポポも、
種が重くて遠くへは飛べず、
花の時期や種になる前に刈られてしまうと、
当然絶えて行ってしまいます。
在来種の中でも、特に背が低くて
小さな可愛い花の咲くハコベやカタバミ、
オオバコ、日本タンポポなどで、
公園や野原の空き地が緑のじゅうたんに
なっていたら、素敵です。
小さな子も思いっきり走れます。
舗装された道のアスファルトやブロックや
タイルの上では転んだらケガが酷いので、
危なくて転べません。
ボランティアをしていた幼稚園の校庭も、
雨でドボドボにならないように
土壌改良がなされていました。
雨の後も平らですが固い土。
校庭までもが、雨の後に凹凸ができる
という理由で、土壌改良がなされて
固められているのです。いつも便利は
何かを犠牲にしています。
子供たちが怪我を気にせず
思いっきり走れる場所は、
今、余りに少ないのではないのでは
ないでしょうか?
先日行った関ケ原合戦開戦地の公園で、
機械で草刈りがなされていました。
刈られた草の中に、たまたま薄い
青色の花が沢山付いた変わった草が
あったので、持ち帰って調べてみたら、
「秋の田村草」という草でした。
本には林や道端で普通に見られると
書いてあるのに、そこに落ちていたのは
1本だけ。他でも見たことがありません。
どんどん数を減らしていると思われます。
「現の証拠」もありましたが、
これから咲くばかりの小さなつぼみまで
刈られていて、今後どんどん数を
減らしてしまいそうです。
草はいつの間にか雑草と言われ、
外来種も在来種も区別なく、1年に何度も
刈られるようになってしまいました。
今は田舎に行っても蓬やツクシ、彼岸花、
ススキですら見ることが少なく、
街では、家や公園の草が可燃ごみの袋に
入れられて、償却されています。
集草せずにそのままにしておけば、
すぐ枯れて土に戻ってまた他の植物の
栄養になります。自然の循環が
忘れられてしまっている今、
草は存在してはいけないのでしょうか?
車社会の為の道路整備により、
道端に草があり、草と遊びながら
通学したり、野原や畑や堤防の草と
共存し、季節ごとの風情を楽しむ
ことも知らない世代が大半。
もしくは子供の頃には経験していても、
いつの間にか忘れて、近所の手前
頓着せず、丸ごときれいに深く
刈っている昨今です。
日本固有の薬草や野草が途絶えて
しまうのは、時間の問題。
草刈りの仕方を、少し見直してもよい
時期がきているのではないでしょうか?
2022年10月2日